前回の記事が好評で、しかも離乳食の問題はたいへん重要な内容ですから今回も同じテーマについて考えました。
昭和55年の「母子健康手帳」に「離乳食の進め方の目安」が、
明確に5ヶ月から始めるように書かれたことによって離乳食の早期化は進められることになりました。
乳児アレルギーが生後6ヶ月頃まで早期化した理由は、
「人工乳中心、早期の離乳食」という二つのスタイルが多数を占めたために起こっていることがこれらから伺えます。
離乳食についても昭和40年代から50年代は家庭で作る限られた素材のものをゆっくり確かめながら
赤ちゃんに食べさせていて、昭和30年代までの育児の考え方がまだ色濃く残っていました。
赤ちゃんの腸の成熟を見守る保育が自然に行われていたのです。このことがアレルギーの早期化を防いだ。
生後5から6ヶ月という時期は赤ちゃんの自律的な免疫がしだいに高まってくる時期です。
そこに次々とさまざまな異種タンパク質が入ってくれば、
発現し始めたばかりの赤ちゃんの自律的な免疫がバランスよく働くことができず、かえって失調してしまうのです。
この時期に母乳栄養を主体としていれば、
母乳中の分泌型インムノグロブリンAが赤ちゃんの腸壁にしきつめられ、
異種タンパク質の丸のままの吸収を防ぐようにしてくれます。
母乳中には腸管粘膜上皮細胞の成熟因子も含まれていますから、
異種たんぱく質やばい菌の丸のままの吸収をブロックする働きも次第に高まってくるのです。
人工乳中心で生後4~5ヶ月頃からさまざまな離乳食を与えた場合には、
異種タンパク質の吸収をブロックする腸粘膜の働きは成熟しておらず、
母乳中の分泌型インムノグロブリンAもないわけですから、たくさんの異種タンパク質が丸のまま体内に取り込まれ、
これまでアレルギーの原因物質とならなかった米、
麦といった穀物までが赤ちゃんのアレルゲンとなってしまいました。
これはかなり危険な状態ではないでしょうか。
離乳食ぐらいと軽く考える事は今後のお子さんの健康的な生活を脅かす事態を招くのではないかと危惧します。
「母子健康手帳」による健康指導で乳幼児の死亡率が減少したということは評価に値しますが、
離乳食の開始時期が早すぎると思います。
赤ちゃんを持つお母さん達に是非一度考え直していただきたいと思います。
参考文献 「赤ちゃんの生命のきまり」西原克成著 言叢社発行